『生きる』(黒澤明/1952)
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志村喬のオーバーすぎる演技も含めて、見終わったあとはいろんなシーンがじんわり心に残る映画。志村喬の「あの……その……」という話し方もこの映画の味。出演者全員に突出した特徴を感じるので劇中会話がおもしろい。突然の葬式の場面転換で、1時間半にもわたって故人についての雑談と各所に挿入される映像で故人を浮かび上がらせていきます。すべては巡査の雪の中のブランコ語りにたどり着くまでの布石。目的を持って「生きる」こと、時間の浪費をしながら「生きる」こと。ダンスホールやカフェでのピアノ演奏のシーン、ハッピーバースデイのメロディーに乗せて階段を駆け下りるシーン、雪の降る夜ブランコに乗って低い低い声でぼそぼそ歌うゴンドラの歌、どれもいい。なかでも息子に胃がんのことを伝えようとするも伝えられない、背中を丸めて俯いた志村喬の侘しさや寂しさは胸に突き刺さってきて秀逸でした。
小津溝口成瀬木下、みんな大好きなのに黒澤明だけは男くさく感じてどうも避けててこの歳になってしまいました(三船敏郎のイメージが強いのかも)。黒澤明で見たのは前年の『白痴』(1951)のみ。時代劇モノを見てないのでこの作品の良さがいまだ黒澤明らしいのかわからないけれど、とにかく映画にパワーがあります。画面の印象やセリフの余韻は名人芸。登場人物の感情の塊がものすごい濃度で目の前にある感じ。
ついに『七人の侍』の見る時期が来たような気がします。
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