地味な映画と地味な音楽が好き。
マノエル・デ・オリヴェイラ『世界の始まりへの旅』、
ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』が好き。
文系家人と11歳と8歳の女の子2人、シャルトリューの男の子とひっそり暮らし中。


『一番美しく』(黒澤明/1944/社団法人映画配給社)

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価格:5,670円(税込、送料込)


1944年、兵器になるレンズ工場に配属された女子挺身隊(じょしていしんたい)の物語。監督第2作品目。黒澤映画の男らしい映画をことごとく見ていないせいか「男らしい」映画以外の映画も別に偏見なく観られました。


終戦前に作られた作品なだけあって冒頭はプロパガンダ的なんだけど、見ていくにしたがってそんなことはすっかり忘れてしまうくらいタイトル通り純粋に美しい映画でした。時代が戦争中で舞台が軍需工場だったというだけで、当時の女性のひたむきさや献身さ、彼女らを気遣う周りの人々(工場長も温かい)、男性についてはほとんど描かれず戦場のシーンもない。ただ女性だけを描き、責任感や他人を思いやることをひたすら描きます。ひたすらひたすら描くためにそれがあざとさよりもどんどん純粋になっていく、これが黒澤明の力?黒澤流?


深夜にひとり工場で自分を奮い立たせるために歌を歌いながら仕事をする渡邉さんの姿を映すシーンは美しい。そのあと、起きて待っていて労いの言葉をかける工場長、という追い打ちで泣ける。逆に反戦映画なんじゃないかとも思うけどそれは謎。