やまだ紫『性悪猫』
孤高の作品かつ傑作漫画。お見事。この漫画がこの世に存在していま読めたことがすばらしくうれしい。この『性悪猫』はすごい。たまらん。やまだ紫の独特の感性は決して突飛な方向に向かうんじゃなく、地面に足の着いた「女」として「母親」として、人間を猫に置き換えて、日常を切り取ります。まるで詩のような台詞や一瞬誰の言葉か迷うような台詞の置き方もクセになって、静かな時間に読むとずっぽりこの世界の虜になります。
うれしいと 泣き
悲しいと 泣き
とうとう ………
雪が降ったと 泣くのです
うまれたての わたしらが見るものは
あれも これも
驚きで やがて愛しい (山吹)
せけんなど どうでもいいのです
お日様いっこ あれば (日向)
ホントのこと、てこういうことなのかもしれないなーと思う漫画です。
佐野洋子のあとがきにありました。
女は生活する事にくそ真面目になってしまうのだ。そして何よりも母親というものがくそ真面目なのだ。
『性悪猫』の母親が、くそ真面目なのを見ると私は、そのくそ真面目さが痛々しくてぼーっと遠くを見てしまう。
育児はくそ真面目ゆえ痛々しい、お母さんはみんなくそ真面目に子どものことを考えて悩んで自分のこと以上に子どものことで泣くんです。
- 作者: やまだ紫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1990/01
- メディア: 文庫
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