地味な映画と地味な音楽が好き。
マノエル・デ・オリヴェイラ『世界の始まりへの旅』、
ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』が好き。
文系家人と11歳と8歳の女の子2人、シャルトリューの男の子とひっそり暮らし中。


『東京暮色』(小津安二郎/1957/松竹大船)

小津安二郎の明朗な軽やかさがない作品。笠智衆原節子、それだけでうれしくなってしまうのだけどもっと洒脱で明るい作品のほうが好み。小津安二郎のいつもと路線とは違う野心作なのかもしれないけれど私が小津安二郎に求めているのは諦めや陰鬱さではない。小津安二郎小津安二郎らしい作品が好きだと『東京暮色』の良さを見つけるのは難しい。有馬稲子が堕胎をして傷心を負い帰宅したときに姉の幼い子どもを見て思わず涙するシーンの一連の流れはなんとなく小津ぽくない(そもそも幼い子どもたちを置いて家を出た母、という設定自体がめずらしい)。時間の流れは小津安二郎だけれど、あまり素敵とはいいがたい、しかし味のある当時の東京の路地の風景とモノクロ、暗いストーリー、そのストーリーになんだかちぐはぐな音楽。もしかしたらいかにも当時の東京を象徴しているのかもしれないけれど、当の東京の人はどう思ってるだろうと思った。

季節が冬のせいもあったと思うけどやたらみんなマスクをしているのが気になった。喫茶店に張り込む警察とか、母に会いに行く原節子とか。昭和30年代とマスクは結びつくのかな?そして原節子の正座。正座の姿勢をしたときに足の位置がおしりの横にくるような女座りと正座の中間みたいな正座。しかしこれが正しいのか正しくないのか分からない(他の作品でもそうだった気もするけど覚えてない)。こういう、ぺしゃん、とした正座が本来の正座なのかな。


小津安二郎 DVD-BOX 第二集

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