地味な映画と地味な音楽が好き。
マノエル・デ・オリヴェイラ『世界の始まりへの旅』、
ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』が好き。
文系家人と11歳と8歳の女の子2人、シャルトリューの男の子とひっそり暮らし中。


やまだ紫『しんきらり』(文庫)

わ、すごい、と読みながら静かに衝撃を受けました。1988年刊行の文庫版で読みました。連載のはじめはひさうちみちおぽかった画風がだんだん飄々とした絵柄になってきます。たぶん、学生の頃に読んでも分からなかった、いまになって分かる主人公の孤独感や虚無感を感じさせる繊細で生々しい大人の漫画。河野裕子の歌集からはじまるこの作品、主婦の上っ面の日常生活を単に描いただけじゃない、もっともっと深い根っこの部分で揺さぶられる感じ。方角としては高野文子なんだろうけど、やまだ紫は高野文子より向こうのさらに孤高の作家に思えます。たとえば小津安二郎の映画よりもっと曖昧な事件で「日常」が動いています。すごいのは、繊細な絵のなかでことさらなにかを引用してごまかしたりすることなく淡々とやりとりが進んでいくのに、強い芯があり辛辣さも怖さも兼ね備えていること。こういう響き方の漫画を本当に久しぶりに読んでうれしかったです。杉浦日向子はやまだ紫のアシスタントをしていた時期があるらしく、ああ、なんかちょっと似てるかなと思いました。

やまだ紫、もっと読みたいです。

しんきらり (ちくま文庫)

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絶対安全剃刀―高野文子作品集

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百物語 (新潮文庫)

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