谷崎潤一郎『細雪』『春琴抄』
谷崎潤一郎『細雪』上中下を相当のんびり読んでいたのだけど読み終わってしまった。読み終わってしまったのがすごく残念。魅力ある細雪の世界は、昭和初頭の本家が大阪船場にある旧家・蒔岡家の四姉妹を中心とした物語。実は映画『細雪』(市川崑/1983)のほうを先に見ていたので、きあんちゃんは吉永小百合でこいさんは古手川祐子、貞之助は石坂浩二とすでにイメージができあがっていて映画の配役そのままの人物が頭の中を動いていた(たぶん小説から先に読んでいてもイメージはわりとぴったりなんじゃないかと思う)。関西を舞台にしているため土地の名前やたとえば老舗料亭の名前だったり船場言葉と呼ばれる美しい関西の言葉だったり、そういう部分も含めて楽しい物語。というか物語というよりとりとめのない日々の記録のような小説で、つらつらと出来事を綴っていく様はいつまでも続くようでとても心地いい。来年の春のお花見には平安神宮に行きたくなる。忘れた頃にまた読みたい。
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船場言葉のような言葉をいま街で聞くのはなかなか難しいけど、例えば瓦町にある平岡珈琲店に行ったりすると常連のお客さんが話す言葉はそれに近い気がする。船場言葉のようなやわらかい関西弁はいいなーと思う。
で、いま読んでいるのは再び大阪・道修町が舞台の谷崎潤一郎『春琴抄』。冒頭の墓地のある描写から地図が浮かび風景も想像できて瞬時に物語のなかへ。
「知っての通り下寺町の東側のうしろには生国魂神社のある高台が聳えているので今いう急な坂路は寺の境内からその高台へつづく斜面なのであるが、そこは大阪にはちょっと珍しい樹木の繁った場所であって琴女の墓はその斜面の中腹を平らにしたささやかな空地に建っていた。」
読みかけだけれど異様にある注釈もほとんど句読点のない文体も楽しい。
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