灰谷健次郎『兎の眼』
内容(「BOOK」データベースより)
大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとしない一年生・鉄三。決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意する。そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった…。学校と家庭の荒廃が叫ばれる現在、真の教育の意味を改めて問いかける。すべての人の魂に、生涯消えない圧倒的な感動を刻みつける、灰谷健次郎の代表作。
長女用だけど、私も読みたくて読んでみました。いやーすばらしい。これはすばらしい。 西大寺の善財童子を見に行きたい。
「たとえ二、三日父親がかえってこなくても、これだけのパンがあればくらしていける、そう思って、每日パンをもらい、每日パンを拾っている、そんなに思うのはぼくの思いすごしやろうか」
「……」
「それからな小谷さん、あんた諭がにやにやして、こじきのまねをしたというて腹を立てているけど、そらあんたの方がまちがっているな。にやにやでもせんことには、あんなことはずかしくてできんというのが、諭のほんとうの氣持やろ」
小谷先生はかえすことばがなかった。
児童文学にしてここまでの心の機微。まさに社会学そのもので、この良質な物語がその昔は推薦図書だったとか(家人曰く)、大人になってわかる良さもあるのかもと思うけど、『兎の眼』の最初から最後まで読んで、要所要所で3回は泣けます。