『白痴』(黒澤明/1951/松竹)
鬼気迫る原節子と白痴であり子羊のようだと称される森雅之。小津映画の、たおやかでつつましい原節子とやさ男の森雅之のイメージが強すぎてこの映画の役どころに最初かなり面食らいました。白痴とはいえ森雅之がこの世のものとは思えない不思議な人でいまいち魅力的だという部分までには感情がついていなかったももの、原節子、森雅之、三船敏郎、久我美子という俳優陣の、全編を通しての相当ピリピリしたテンションの高さと熱演ぶりはすごい。映画というより舞台。精神の高揚感? 種類は違うけどベルイマン映画を思い出しました。
フィルムをズタズタにカットされたというわりには、はしょったのは分かるものの、話の内容は分かるし、この作品の持つすごさは十分伝わります。しかしドストエフスキーの原作を読んだことがないけど、札幌を舞台にしてナスターシャ=那須妙子、ていうのは冗談? 助監督に野村芳太郎や中平康が名を連ねていたりして、へー!と思う。