『裸の島』(新藤兼人/1960/新東宝)
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この映画を勝手にずっとブレッソンみたいな映画だと思っていたのだけど、それとはまた違う摩訶不思議な映画でした。摩訶不思議なのに不思議でなくなる瞬間があってそこから引き込まれます。瀬戸内海の孤島で生きる一家。作物のための水がないため、黙々と水を運ぶ両親。サイレントではないのに"台詞が一切ない"という不思議さ、音はあるのにしゃべらない、でもそれが見ていくと不思議でなくなってくる。厳しいけれど日々の地味な単調な労働、自然との戦い、そういう美徳が見ていてなんと美しいことだろうと思いました。大事な水をこぼした乙羽信子を殿山泰司が張り倒すシーン、長男を亡くして作物をめちゃくちゃに荒らして嗚咽する乙羽信子、それを張り倒さずにじっと見つめる殿山泰司。単調であるなかの、このやりとりのシーンが素晴らしかったです。