『長江哀歌(エレジー)(三峽好人/Still Life)』(ジャ・ジャンクー/2006/中国)
2006年ヴェネチア国際映画祭グランプリの金獅子受賞作品。2009年に完成予定の国家をあげての大事業、長江・三峡ダム建設プロジェクト。このダムの街に住む市井の人々の暮らしを見つめた人生ドラマ。解体寸前の建物の退廃的風景と靄のかかる長江の雄大な景色の対比を一貫して見せつける。現代中国の経済成長による大きな大きな変貌は人々の生活に多大な影響を与え、時に家族をばらばらに孤独にさせる。"それでも生きる"という根元的な意味を持つエネルギー溢れる人々の暮らし。ジャ・ジャンクーを見るのは『一瞬の夢』(1997)に続き2作目だけど、すごい。なんて映画を撮る監督だろうと感激する。いまジャ・ジャンクーと同じ38歳くらいの映画監督でこんなにセンスとパワーを持つ監督がいる?ロケット発射するモニュメント(住民の移住を記念して市が建てたものらしい)やビルの解体の唐突なCGに関して賛否両論あるみたいだけど、私は全部ひっくるめてジャ・ジャンクーが好き。意図的な唐突で稚拙なCGがずしんと心に響くのは、水没してなくなった街やかかわる人々の幻想や苦しさ、記憶、あらゆる心情が的確に表されてるからだろうと思う。喧騒と沈黙が同時にあり、逆光で映し出される絵的な画面がとても映画的で美しい。
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