地味な映画と地味な音楽が好き。
マノエル・デ・オリヴェイラ『世界の始まりへの旅』、
ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』が好き。
文系家人と11歳と8歳の女の子2人、シャルトリューの男の子とひっそり暮らし中。


『妻の心』(成瀬巳喜男/1956/東宝)

東宝オールスターズ的顔ぶれの出演陣でわくわくする。お決まりの家族間のお金の工面話。アングルと間の使い方がうまくて、子どもが遊ぶゴムボールのはずむ音、声の出る犬のおもちゃ、雨音、静寂のなかにひびく余韻の残るそれらの音の使い方が上手。高峰秀子三船敏郎の雨宿りのシーンがいい。目をあわす、そらす、ふせる、何も言わなくても二人の絡み合う心情が画面にきめ細やかに描かれる。なんでこんな女性的なシーンを男性監督が撮れる(しかもすばらしく美しく)のか本当になぞ。夫役・小林桂樹も地味なのに憎めない素直な男性を演じていて好感。たぶん器用な俳優さんなんだと思う。"キッチンはるな"の人が良く陽気な兄妹は加東大介沢村貞子。後で知ったのだけど、この二人は実の兄妹だということでそんなお楽しみもあったんだなーとまた楽しくなる。ラスト、夫婦の心のわだかまりが自然とほぐれていくのが絶妙で美しく気持ちがよい。ああ、こういうのが夫婦なんだなあと思う。いい映画だなー。