『残菊物語』(溝口健二/1939/松竹)
大掛かりなセットも感激ものだけれど、とても映画的で長回しで構図の美しい作品という印象。セットと俳優がそのまま雰囲気のなかで溶け込んでいて、俳優の顔をほとんどアップで映さない常に引いたカメラが誰かに感情移入するのではなく物語自体に引き込む。尾上菊之助(花柳章太郎)復活の「積恋雪関扉」の場面がぞくぞくするほど良いし、ラストの道頓堀川で役者達が豪華な船に乗り込み船先に立ち、両岸のお茶屋に挨拶をしてまわる場面なんてそんな時代のミナミ自体や光景に興味をひかれる。これが戦前の映画かと驚くほど面白く完成度も高い。すごい映画。
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