地味な映画と地味な音楽が好き。
マノエル・デ・オリヴェイラ『世界の始まりへの旅』、
ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』が好き。
文系家人と10歳と7歳の女の子2人、シャルトリューの男の子とひっそり暮らし中。


『陸軍』(木下惠介/1944)


木下惠介監督4作目。太平洋戦争の3周年記念映画として、軍部の意向により製作された国策映画。


幕末から明治の日清・日露戦争、太平洋戦争と、父子三代にわたる陸軍との関わり合いを描いています。木下惠介とはいえ国策映画が色濃くて、正直退屈な80分を過ごすとラストにすごいものが待ち受けていてました。


出征する息子を見送らず、家で家事をこなす田中絹代。ふと座り込み、「一、軍人は忠節を尽くすを本分とすべし……」と軍人勅諭の聖訓五箇条を遠い目をして唱える彼女をカメラはひたすらアップで捉えます。そして思い立ったように息子のいる兵隊の列に向かって走りだします。旗をふる群衆にかこまれ、笑顔で出征する息子を必死に追いかけ、涙をふきながら言葉をかけ、最後には転んでしまい、そのあと静かに静かに手を合わせて祈る田中絹代の渾身の名演。国策映画調から一気に転換して完全に木下惠介の映画になった瞬間の高揚感、ラスト10分の木下惠介の底力がとんでもなくてすばらしかったです。