池田理代子『女帝エカテリーナ』と横山光輝『平家語物』
女帝エカテリーナ(3) [ 池田理代子 ] |
池田理代子『女帝エカテリーナ』文庫版全3巻。帝政ロシア・ロマノフ王朝の女帝エカテリーナ2世。ドイツの田舎貴族ながら意識の高いゾフィーが、ロシアの女帝になっていく歴史マンガ。幼い頃から胸に抱く野心とそれに見合う知性を身に着ける努力と勤勉、ロシアの血を一滴も持たない彼女がロシア皇帝の妃になり、ロシアの女帝になり、その政治手腕により領土拡大を進め、ロシアの教育システムを確立し、絵画や宝飾品を集めエミルタージュ美術館を創設するという、ロシア人よりロシア化しロシアに尽くしたパワー溢れる女性。そのうえ晩年までに途絶えることなく公認の愛人が10人も20人いたというその豪傑っぷり。
どんどん強くなってどんどん美しくなっていく様がなかなか愉快。
文庫版3巻程度ではぜんぜんおさまりきらないエカテリーナ2世の生涯。もうちょっと長さがあるともっと入り込めた気がする。『女王エリザベス』も同じく、もっと長くてどろどろしてたらきっとおもしかったのになー。
女王エリザベス (中公文庫コミック版) [ 池田理代子 ] |
横山光輝『平家語物』文庫版上中下の全3巻。これを読む前に横山光輝とは別の平家物語や清盛や義経の本を読んでいたりテレビを見たりしてたので、全3巻の印象は、敦盛最期のぐっとくるエピソードをあっさり1ページで終了したり、あわただしく進んでいく感じ。平家一門の栄枯盛衰をつかむダイジェスト的なマンガ。むふう。
平家語物 マンガ日本の古典 10 中公文庫 / 横山光輝 ヨコヤマミツテル 【文庫】 |
横山光輝のあとがき。この素直な感想。こういうが先生のすてきなとこやなーと思いました。
一番苦労したのは名前である。みんな一字もらって名をつけているため似たような名前で、常に出てくる人物ならば覚えやすいのだが、たまに出てくると混乱する。清盛の兄弟は経盛、教盛、頼盛などがあり、子供に重盛、基盛、宗盛、知盛など、さらに孫には維盛、資盛と出てきては、途中でこれは弟か、子か、孫か、誰の子かと戸惑い、系図に目を通して確認しながら絵にしなければならなかった。
NHKドキュメント72時間<再放送>『青春の鴨川デルタ』
再放送してたドキュメント72時間「青春の鴨川デルタ」の回。「友達いないし」「バイトもしてないし」「京都の大学生らしいことってなんだろう」と鴨川デルタにただいるだけの時間を計測している同志社の大学生の男の子。彼のそういう感覚に懐かしさを感じつつひっぱられて、見終わってもわりと引きずってます。立ち止まる自由。
GWは御在所ロープウェイ・さわやか・直虎の井伊谷へ
帰省ついでに鈴鹿スカイラインをくねくね御在所ロープウェイへ。くねくね道でハムコダウンしつつ、到着時には持ち直し無事御在所ロープウェイ。思ったより立派なロープウェイからの見晴しでした。
さらに道中、静岡のハンバーグレストラン「炭焼レストランさわやか」へ。実に学生時代ぶりという久しぶりの訪問。ぬかりなく開店前に予約記名。お昼過ぎに行って待ち時間なしで席に座ったけど、その時点でなんと4時間待ち。すごい人気ー!
みんなでげんこつハンバーグ。うまー。
大河ドラマ「おんな城主 直虎」のドラマ館で遊んで、井伊直虎が眠る龍潭寺で井伊家の歴代のお墓参り。ドラマ館も龍潭寺もすごいひとでした!大河ドラマ効果おそるべし。
里中満智子『長屋王残照記』
長屋王残照記(2) [ 里中満智子 ] |
めっちゃおもしろいです。里中満智子の日本古代史がおもしろすぎてたぶん自分史上はじめて日本古代史の興味が上昇中。口分田なつかしい。三世一身の法から墾田永年私財法の流れの公地公民の崩壊も、こんな楽しい気持ちで読んだことないわー。小学生か中学生の時に…!と思うものの、いま読んでるからよけいおもしろいのかもしれません。そもそも私、里中満智子をまともに読んでるのは先日ようやく22巻目まで読んだ『天上の虹』からな気がします。
『長屋王残照記』は『天上の虹-持統天皇物語』を補完する関連作品。天武天皇の長男・高市皇子。その高市皇子と御名部皇女の間に生まれたのが長屋王。父・高市皇子譲りで、誠実に生きる長屋王にふりかかる悲劇の物語。泣けます。
『天上の虹-持統天皇物語』後の物語ゆえに、氷高皇女の元正天皇姿や首皇子の聖武天皇姿が見れるのは読者として盛り上がります。
天上の虹(22) [ 里中満智子 ] |
杉浦日向子『うつくしく、やさしく、おろかなり-私の惚れた「江戸」』
うつくしく、やさしく、おろかなり [ 杉浦日向子 ] |
江戸戯作の嚆矢と目される平賀源内は、人の一生を、「寐れば起(おき)、おきれば寐、喰ふて糞(はこ)して快美(きをやり)て、死ぬるまでが活きる命」(『痿陰隠逸伝(なえまらいんいつでん)』)と、情け容赦、アラレもなく、バッサリ一刀の下に、斬り捨てています。
眠れば夢に遊び、醒めては世知辛い現実に嘆息を繰り返し、にこにこ食べてはしかめ面で排便し、たまの夜には一瞬のはかない極楽を味わい、そんなこんなで、ふと死ぬる日まで、お目出度くも生きているよ。
これが、泰平の逸民を自負する、「江戸人」の眼差しです。
子どもの読む学習まんがの偉人伝は、寝る間を惜しんで勉学に励み、社会に貢献した立派な人が多いけど、続けて読んでるとちょっとしんどい。子どもの頃はそれでいいけど、いい大人になると、平賀源内のこんな人生観はなんと突き抜けた明るさで、うっとりくらくらしてしまいます。
杉浦日向子『食・道・楽』より
杉浦日向子の食・道・楽 [ 杉浦日向子 ] |
杉浦日向子最後のエッセイ集『食・道・楽』。そのなかの「色事は四十からがおもしろし」より抜粋。
だれもが平均寿命を生きられるわけではないが、いちおう、四十からは折り返し地点なのは確かだ。江戸では四十を「老いの坂」といい、ゆるゆる下る坂の入り口と見た。登りのときはしんどくて見えなかった景色も、しばし遥か遠くまで見渡せる時期でもある。
おたのしみはこれからだ。シジュウカラはおもしろい。
シジュウカラ、といい、40代で早逝した杉浦日向子を思うと泣ける文章で、ふと気づけば私もそういう時期なのでした。人生は長いようで短いのかも、と最近ひしひしと感じております。